ACTION
活動内容
活動領域
活動実績
活動実績2016
第5回
ライフアンドフォレスト
2015年度第3回
前橋木育
エキスパート講座
FIT・木質バイオマス発電
に関する情報提供会
第12回
才の木トークカフェ
日本学術会議
公開シンポジウム
第66回木材学会大会
公開シンポジウム
第13回
才の木トークカフェ
木材サミット2016
日本学術会議
公開シンポジウム
才の木10周年
記念事業I
第14回
才の木トークカフェ松山
才の木10周年
記念事業V- i
三菱総合研究所との
協働事業
2016年度第1回
前橋木育
エキスパート講座
才の木10周年
記念事業 V
木育効果実証研究事業
第10回
人と自然の共生
国際フォーラム
東京農業大学との
コラボ講座(C021)
才の木10周年
記念事業 II
第15回
才の木トークカフェ盛岡
才の木10周年
記念事業 V- ii
三菱総合研究所との
協働事業
インスピレーション合宿
活動実績2015
第4回
ライフアンドフォレスト
2020年までの
国際スポーツイベント
関係情報提供会
2014年度第3回
才の木前橋木育講座
第10回
才の木トークカフェ
第11回
才の木トークカフェ
木材サミット2015
2015年度第1回
前橋木育
エキスパート講座
東京農業大学との
コラボ講座(C109)
2015年度第2回
前橋木育
エキスパート講座
第9回
人と自然の共生
国際フォーラム
日本木工機械展
ウッドテック2015
東京農業大学との
コラボ講座(C115)
内閣府男女共同
参画局事業
「木づかい」産業における男女共同参画推進による地域活性化
活動実績2014
2013年度第2回
才の木前橋木育講座
日本学術会議
公開シンポジウム
第8回
才の木トークカフェ
第3回
ライフアンドフォレスト
第64回木材学会大会
公開シンポジウム
木育サミット2014
第9回
才の木トークカフェ
木材サミット2014
前橋木育講習
2014年度第1回
才の木前橋木育講座
東京農業大学との
コラボ講座(C026)
第8回
人と自然の共生
国際フォーラム
2014年度第2回
才の木前橋木育講座
東京農業大学との
コラボ講座(C008)
活動実績2013
第63回木材学会大会
公開シンポジウム
体験講座
木材から広がる
アロマときのこの世界
第7回
才の木トークカフェ
第7回
人と自然の共生
国際フォーラム
2013年度第1回
才の木前橋木育講座
活動実績2012
フォーラム
森を守れる住まい作りを
林野庁補助事業により新CFPプログラム申請を検討の企業・団体を支援
第5回
才の木トークカフェ
カーボンフットプリント
普及セミナー
第6回
人と自然の共生
国際フォーラム
第6回
才の木トークカフェ
活動実績2011
シンポジウム
日本林業再生の道
Part VI
PCRに認定
平成23年度木材関係の
カーボンフットプリント
表示の算定支援等事業
第3回
才の木トークカフェ
東京農業大学との
コラボ体験型講座
第1回
ライフアンドフォレスト
第4回
人と自然の共生
国際フォーラム
第4回
才の木トークカフェ
活動実績2010
シンポジウム
日本林業再生の道
Part V
第60回木材学会
公開シンポジウム
京大研究林エコツアー
第2回
才の木トークカフェ
認定NPO法人に認定
第2回講習会
低炭素社会に向けての
新カーボン戦略
第3回
人と自然の共生
国際フォーラム
シンポジウム
木材自給率 50%を
達成するための
課題と方策
活動実績2009
第6回シンポジウム
第59回木材学会大会
公開シンポジウム
第1回講習会
低炭素社会に向けての
新カーボン戦略
東大千葉演習林
エコツアー
第1回
才の木トークカフェ
第2回
人と自然の共生
国際フォーラム
活動実績2008
第3回シンポジウム
第4回シンポジウム
第5回シンポジウム
共催シンポジウム
日本林業再生の道
Part IV
あいち海上の森大学
京大研究林エコツアー
青梅総合高校演習林
エコツアー
東大千葉演習林
エコツアー
活動実績2007
あいち海上の森大学
人と自然の共生
国際フォーラム
名古屋国際木工機械展

活動実績


NPO法人才の木・第2回シンポジウム パネル討論会
市民・産業・地域からみた木づかい・森づくり

パネラー及び司会
(敬称略)

パネリスト

井上 雅文(いのうえ まさふみ)- 東京大学准教授/NPO法人才の木・理事


浅田 茂裕(あさだ しげひろ)- 埼玉大学准教授


三浦 史朗(みうら しろう)- 大分県豊後大野市立朝地中学校長


花野 耕一(はなの こういち)- 東京都立青梅総合高等学校長

司会

川井 秀一(かわい しゅういち)- NPO法人才の木・理事長・京都大学教授







川井:
本年(2007年)4月に才の木設立記念第1回シンポジウムを開催いたしました。その折には市民、林産業、森林産業という立場の異なる三人のパネラーを招き、連携とコミュニケーションをキーワードに議論いたしました。

本日は、「木をつかって、森をそだて、環境をまもる」という大きな課題について木材教育に焦点を当て、4名のパネラーと共に議論を深めたく思います。
森林の重要性は国際的には地球温暖化抑制に関わる二酸化炭素の吸収源としての役割がCOP13や京都議定書で話題になっていますが、国内でも昨年(平成18年)森林・林業基本計画で「木育」が規定され、その動きが注目されています。市民が日々の暮らしにどのように環境に関われるか、その一つの答えが木づかい・森づくりにあるように思います。

本日は子供の視点、教育の視点から木材利用を議論していきます。DVD「きいたろう」を見て、皆さんはどのように感じられたでしょうか。ご覧になった印象、感想を教育現場におられる三浦さん、花野さんに伺います。

三浦:
DVDを見て、CO2の流れ・循環を初めて知りました。木の半分が炭素であるとか、温暖化現象は良く知られていますが、それが森林や木材利用とどのように結びついているのか、大変わかりやすく説明されていました。

花野:
森林の問題等、導入として大変わかりやすく、まずこのDVDを欲しいと思いました。あのようなアニメを高校生に制作させてもおもしろいかもわかりませんね。若者の感性を取り入れていけばよいのでは・・・

川井:
私も才の木のNPO活動を含め、3年間にわたり木づかい運動に参画しています。熱帯天然林の過伐による破壊とわが国での木が伐られないこと、木が使われないことによる森林荒廃、とりわけ人工林の荒廃を区別して考える必要があると常々主張していますが、未だ十分に理解が進んでいるとは言えません。

京都府木材協同組合が商工会議所の事業として小学校の出前授業を実施したときに、このDVDを使わせていただきました。木材利用=樹木の伐採=環境劣化と短絡的に結びつけるのは小学生も同じです。出前授業でのDVDの反響は大きく、感想文を見ると、多くの子供たちのイメージが変わったようでした。教育が大変重要だということを改めて思いました。
浅田さんからは「きいたろう」は3部作の一つであり、残りの2つは未完成という説明がありましたが、財政的な支援を林野庁等で考えていただくことはできないでしょうか?

河野(林野庁):
初めてDVDを拝見しました。「木育」を進めるのに児童・生徒の心を引きつけるコンテンツであり、導入部にふさわしいと感じました。林野庁としても是非このような木材利用に関わるコンテンツ作りに協力をしたいと思います。現在、「木育」を検討していますので、そのアウトプットの一つとしてこのような教材ができることを期待します。

川井:
浅田さん、すでにアイデアがあるかと思いますが、3部作について紹介いただけますか?

浅田:
木材の環境親和性、アメニティ性、フロンティア性の3つの観点から、3部作を考えています。
先のDVDが木材利用と地球環境問題、すなわち、環境親和性についてのコンテンツでした。木のアメニティ性を強調して、木を使うことが私たちの心と身体にどのように役に立つのか、さきほど木造校舎の効用について三浦先生からのご講演がありましたが、きいたろうに木の良さを語らせる。

木のフロンティア性についてはわれわれの生活を開拓してきた木材の今後の可能性についてのアイデアなど、まだまだ沢山のアイデアがありますし、花野先生の提案された若い人たちのアイデアを加えるとさらに多様なコンテンツが期待できます。

井上:
木材を材料として使う立場からみると、エコマテリアルという概念があります。
エコマテリアルの指標に、機能、強度、物性などのフロンティア性、生産時や廃棄時の環境負荷などの環境調和性、人と材料との関係を明らかにするアメニティ性があります。
この3つの指標を軸にして、きいたろう3部作のシナリオが概略できています。元来木材は環境調和性とアメニティ性に富んだ材料として認識されています。一方、機能性が他材料に比べて劣ると考えられていますが、実際はどうなのかということも理解いただけるようにしています

川井:
今回のDVDでは、木材利用が地球を救うというのが重要なメッセージだと思います。エンディングで「木を賢く使うというのはどのようにするのだろう」という謎かけで終わりました。木材利用では「賢く使う」が大変重要ですので、詳細を説明いただけますか?

井上:
フロンティア性に関わる部分です。たとえば、木材は方向性があって、軸方向に強く、横方向はその1/20になる、また木材は燃えそうで燃えない、このような機能を十分発現できるような使い方をしましょう。環境調和性やアメニティ性についても木の特性を理解して使う、これが賢く使うことに繋がります。



川井:
朝地中学校の木造校舎はすべてスギ材でしょうか?

三浦:
地元の木をたくさん使おうということで、ヒノキ材とスギ材を使っています。

川井:
生徒さんの感想、「朝中川柳」を興味深く聞かせていただきました。
新築時は木の香りが大変強かったようですね。その香りはヒノキでしょうか?木の香りを肯定的に捉えている生徒さんもいれば、一方、においも雨漏りにも慣れましたという表現は木の香り(臭い)が強すぎる、寸法の狂いもあるといった木材の欠点をやさしく受け止めている印象を持ちました。

同じにおいが受け止める人間によって印象が大きく変わるのは、年齢や性別等の違いもあるでしょうし、生理や心理などの分野と協働して科学的な解明が今後の課題と考えます。居住環境における木の香りの解明がVOCの規制との関連でも重要になってきています。

このような問題に対して正確な知識とわかりやすい表現で社会に発信していくことが求められていると考えます。この分野で活躍されている谷田貝先生(秋田県立大学木材高度加工研究所)に意見を伺います。

谷田貝:
木とにおい、精油の関係について研究しています。
秋田県能代は木都として知られています。小中学校の校舎の多くは木造です。その中の一つを使って、教室の温熱環境、空気環境を測定し、木の臭いについても検討しています。

木のにおいについては生理的な反応など最近多くの研究事例があり、木材のにおい自体は鎮静作用があるという結果が出ています。感想文で「ほのかに香る木の臭い」とありますが、最初は確かに「くさい」と感じることがあります。しかし、このくさいにおいは低沸点の揮発性成分の作用であり、すぐに消えます。ヒノキとスギとは全然においが違いますが、ヒノキのほうが強いにおいです。これも数週間も経てばほとんど揮発分が消失し、後は鎮静作用を与える成分のみが有効に働きます。

極く新築時に強いにおいが出ることがあり、私はこれも身体にマイナスにはならないと思っていますが、これは一般論であって、アレルギー体質や体調などを考慮に入れる必要があります。

川井:
花野先生、青梅総合高校の森林環境教育の紹介を大変興味深く聞かせていただきました。
小学校との連携による環境教育、地域との連携を現在具体的に実践されていますが、このような連携をNPOやその他の環境活動を実践している団体に拡げることは可能でしょうか?

たとえば、本シンポジウムは文京区教育委員会の後援をいただき、地域の先生がたも出席いただいています。文京区の小学校から青梅の演習林に環境教育のために出かけていくことはできるでしょうか?

花野:
可能です。黒沢第1演習林を整備していますので、東青梅あるいは青梅駅から歩いて約20分でアクセスできます。近くには鉄道公園もありますので、土・日曜日に来ていただく、あるいは学校行事として平日にきていただければよいと思います。時期や時間に応じていろいろな体験ができます。

川井:
子供たちが間伐しているスギはどのくらいの大きさですか?

花野:
直径15cm以上あったかと思います。倒すのに苦労していました。

川井:
全員ヘルメットをしていましたが、怪我への配慮はどのようにされているのですか?

花野:
木を倒すのは大変危険ですので、細心の注意を払いますし、大人の応援を依頼しています。

川井:
5名の環境資源系の高校生が先生になっていましたが、サポートは何名くらい必要ですか?

花野:
サポートは教員が十数名、森林組合から10名程度応援に駆け付けていますので、かなり大がかりですが、みんな楽しんで参加しておりました。120名の小学生が同時に間伐体験したのではなく、60名が間伐体験、残りの60名はウッドクラフトの制作に携わっていただきました。

川井:
演習林のなかには天然林もありますか?

花野:
はい、いろんな樹木があります。樹木の育ち方の観察もしてもらえます。



川井:
生態系の観察や森林樹木の観察など、いろいろな森林教育、演習林の利用法が考えられますね。
森林というフィールドがあるというのが大変重要です。森林や樹木に関するさまざまな情報が付加されていることも必要です。間伐体験等により、子供たちが森林の育成に間伐の重要性を学ぶ、一方、生み出された間伐材を加工して、暮らしに活かす部分が今後の課題というコメントがありました。
クラフトなどの教育的なレベルで使うものと産業レベルでの利用法とは違いますが、前者についても木材学会の研究者から多くのアイデアを出して連携できるのではないでしょうか。

4人のパネラーの講演で、いずれも森林環境教育や木材教育を通して子供たちに考える力をつけたいと話されていたのが印象に残っています。木材や森林の効用を単に知識として理解するだけではなく、これらを教材にして人間形成に関わる思考力を養うことを目指しているように感じました。

井上:
講演でも申し上げましたが、たとえば環境問題は、立場や時代、地域によって大きく変わるものです。したがって、環境問題についてはその時々のニーズに応じた解答を自ら導ける力を養うことが、知識を身につけること以上に重要です。
そのため「きいたろう」では問いかける方式を採用しています。問いかけを通して子供たちに考えさせ、議論を経て答えを導き出すようにマニュアルを用意しています。

浅田:
学習の内容、たとえば木材について知っていることもある反面、知らないこともある。知らないことは存在していないことと同じです。
一方、理解できないこともあり、存在は知っていても理解できないので考える材料にならない。誤解していること、正確でないことは考える材料になっているのが問題です。われわれがDVDを制作する際にもっとも気を使ったことはフェアーであること、木材についてフェアーであること、木材のプロパガンダにならないようにすることでした。

フェアーであるために、重要な知識で、学ぶ対象として価値あるものが知られていないことを、子供たちにまず明らかにして、それをわかりやすい形に翻訳していくことが大事です。これらが準備されたときに初めて子供は自分で考えることができると思います。したがって、考える力のために、考える機会を与えるためにこそ確かなデータ、正しいデータ、学会の認証したデータ、情報が必要だと思います。

三浦:
木造校舎建設の過程を見ると、干ししいたけの生産、林業、畜産産業が主力を占める中、地域の人の木や森林に対する思いが後押ししたのだと思います。豊かな感性があって、初めてやる気も生まれてくる。科学的に確かなものを教材に組み込むことにより、本当の考える力が出てくると思います。

花野:
農林高校が廃止される時点で、環境教育を継続することにしました。
森林に関わることによって豊かな人間性、社会性を育てることができると思ったからです。実際そのような効果が出ていると感じています。また間伐や下草刈りで道具を使います。作業には理屈や理由があります。体験によって理屈が理解され、応用力につながる。また、自然環境の保全という意識を高めることに繋がっていくと思います。

会場(高校生):
花野先生に・・・、森林での活動をどのような目的で実施されていますか?たとえば、教育という観点から、農林高校であれば林業従事者を育成することが目的になるかと思いますが、環境教育の一環として行う場合の目的はなんですか?

花野:
総合高校での森林環境教育の目的は林業専門家を育てることではありません。
総合学科ではいろいろな選択科目を準備しています。その中に森林に関わる科目と全員が学ぶ共通科目として「自然と環境」という科目があります。科目の中で森林や環境の勉強をします。

会場:
そのなかで、間伐体験だけではなく、生態系や林業の現状について学ぶ機会というのはありますか?

花野:
はい、幅広く勉強し、森林の現状について学ぶ機会をもち、間伐体験などを実施しています。

会場(教員):
東京都教育委員会は、山での実習については「待った」をかける傾向があります。怪我をすると困るなどの心配があると思うのですが、その場合教育委員会を説得するのですか?

花野:
農林高校から出発し、総合高校の課程のなかで間伐作業等をしているので、特に問題は生じていません。ただ、小学生等の学習では怪我には十分注意して実施しています。

川井:
講演のスライドを見て驚いたのですが、女子高校生の割合が総合高校では多いのですか。

花野:
全国的にも総合高校には女子が多いようです。東京都においては女子が6割〜7割を占めています。森林環境教育が女生徒でできるのかと最初は心配しましたが、うまく実施しています。



川井:
「木育」が森林・林業基本計画に取り上げられ、委員会も(財)日本木材総合情報センターに設置されました。「木育」の範囲、森林環境教育との関係など、活発な議論が委員会でおこなわれていますので、紹介いただきます。

浅田:
基本的には大人であれ、子供であれ、まずは木材というものに触れていただく機会を提供することから始めようということで進んでいます。
次に、自分らしく、自己実現に向けて創るというステップがある。最終的には、木材を俯瞰的に把握し、社会と協働して木材利用の促進に向けて行動する、そのような教育として「木育」を捉えています。

川井:
これまでの教育が個人の経験と哲学の基づき行われていたものを、大学での林産教育・森林教育と体系的・組織的に結合して科学教育としての教育システムの開発が求められていると思います。

花野:
先ほど女生徒が多いということが話題になりました。女生徒の進路希望をみると将来保育士や介護士になりたいという子供たちが多いのです。お年寄りとの遊び道具も必要になりますし、木材を用いた遊び道具など、教材開発に向いていると思います。

浅田:
青梅総合高校では、まず演習林、フィールドがあり、その中に体験学習が組み込まれています。
体験学習には4つの分類があり、そのひとつはボランティア、必要経費を除いた対価を要求しない。2つめはフィールドスタディ、フィールドに入り、体験しながら学ぶ。3つめはインターンシップ、職業訓練やマニュアルトレーニングです。4つめは日本にないものですが、サービスラーニングと言います。これは自分の労働を対価にして学びを得るという活動です。青梅高校の場合の体験学習にはこれら4つの要素がすべて存在しています。

森林体験講座では小学生の体験学習に高校生が子供たちに教えるとことを通して学ぶサービスラーニングをしています。ボランティアそのものもあり、カリキュラムの中には、森林を理解するためのフィールドスタディや職業訓練も組まれている。このように整備されたフィールドを持ち、適切な教育、様々な体験教育プログラムを提供しようとする動きが芽生え、実際に育っていることを聞いて、これからの「木育」の展開が自ずから明らかになっていくと期待しています。

川井:
青梅総合高校には森林・フィールドがあり、様々な活動の場、学びの場がありますので、才の木としても、木材学会・森林学会としても今後の連携に大いに期待できます。木材利用が若干弱いという話もありましたので、木材学会会員によるたとえば出前授業なども考えられます。

会場(マスコミ関係):
ミスリードの話題がありました。30代、40代の世代は未だに「木を伐ることは環境に良くない」と思っている人が多く、そのような人たちがマスコミで大々的に報道しているのも事実です。
この報道を見た視聴者や子供たちも影響を受けることになるので、教育現場だけでこの問題を取り上げても難しいと思いました。私個人は木を伐って使っていくことが大切だということを理解していますが、これを大人にも教えていかなければならない。子供ばかりでなく、マスコミ対策や大人への環境教育について意見を聞きたい。また、学校の現場の先生が「木育」についてどのように考えられるのかを知りたい、同世代の先生も正確な知識をもっておられないと思うが、先生たちの教育も必要ではないでしょうか。

井上:
木材を使うためには森の木を伐採しなければなりません。
木の伐採は環境破壊ですというところが正確ではありませんが、NPOの人たちが誤解によってこのような主張をされる場合と一方、業界によってはプロパガンダを行い、積極的に誤解を助長する場合もあります。どちらに対しても研究者の立場としては、地道に啓発・普及のための努力をするしかありません。

浅田:
制度的には、たとえば米国にはNational Academy of Engineeringがあり、2000年にテクニカルスピーキングという有名な報告書が刊行されました。その中で政治家、経営者、マスコミ関係などの仕事に進む文系学生には科学教育を大学で必ず受講させるという提言が出されました。
これは個別の森林・木材教育に関するものではありませんが、大統領の諮問機関から出された提言ですので影響力があり、大学教育において科学教育や科学的素養を身につけることが一般化しつつあります。日本ではこの点まだまだ欠けています。
たとえば、学校の教科書を作る、学習指導要領を作る時期には、文科省は意見募集をしますので、森林について、木材について、あるいは環境について高校で体系的に学ぶべきだというコメントを、効果の程は定かではありませんが、出すこともできます。もちろん学会などはこれに対して反応すべきです。

川井:
補足しますと、私どもがNPO法人才の木を作る大きな契機になったのは、(社)日本木材学会が消費者・市民、マスコミ、環境教育や経済界と一緒に「日本の森を育てる木づかい円卓会議」を組織し、国産材利用を促進し、日本の森林荒廃を防ごうという提言書「木づかいのススメ」を取りまとめたことにあります。
このような学会から社会に向けての発信を持続的に粘り強く実施するために、NPO法人を設立し、市民との協働作業で啓発普及の努力をつづけています。この3年間、林野庁の努力もあり木づかい運動として少しづつですが、私どもの主張に一定の理解が得られるようになっていると感じていますが、まだまだ十分でないことも事実です。

三浦:
義務教育のレベルでは、「食育」は浸透していますが、「木育」は知らないと思います。ただし、周辺の学校でも木造校舎は着実に増えています。そういうところに勤務して教員も木の香りや木の良さを認識するようです。「木育」からは未だ遠い段階です。

花野:
青梅総合高校は開校後まだ2年で、教員もいろんなところから異動してきます。
「木育」という言葉はまだ知らないと思います。森林体験もほとんどないので、生徒と一緒に経験してもらっています。子供以上に感動している先生も多く、まず理解者を増やすことから始めています。技能を教え、指導できる先生になるのは無理でも、木を伐ることの大切さを理解して一緒について行って見てもらうことはできると思います。
先日の小学生の体験講座に指導にきていた専門家が、間伐というのは森林に光りを当てることですとの説明があり、その後の実習でその通りだということが実感できました。体験する、見てみるということが大切だなと思います。



川井:
体験というのは本当に大事で、やって見せて、やらせてみて、そして納得させる、理解者を増やし、ネットワークの輪を地道に拡げることが目標への近道です。
運動はまだまだ小さく、社会的な大きなうねりまでに至っていませんが、波は小さくとも確実に来ている。その波をうまく捉えて、大きな波にしていくには皆さんがそれぞれできることを実行し、協力・連携することが必要です。最後に一言各パネラーからメッセージを・・・

井上:
もっともっと応援団を増やす努力が必要だということを感じました。

浅田:
三浦先生や花野先生の学校のように直接体験できる学校・生徒さんもあれば、全く機会にめぐまれない生徒もあります。体験できない子供たちにも教育プログラムを準備していきたいと思います。

三浦:
恵まれた環境の学校にいますので、教育実践を通じてこのような環境で勉強ができて良かったと思う生徒を一人でも多く育てていきたいと思います。

花野:
総合高校になって、生徒全員が森林のすばらしさを体験することができるようになりました。さらに、小学校を含む多くの連携をできる限り広めようと思いますので、皆さんも応援ください。

会場(大学関係者):
NPO法人才の木は木材利用を促進して日本の森を元気にするという目標がわかりやすい。その点、「木育」の目指すもの、最終着地点は未だ見えていないのではないでしょうか。
「木育」はもっと大きな目標、たとえば、豊かな感性や(木を伐って、使う)不条理を受け入れることを教育していくのが「木育」で、木で家を建てる人が増えるというのはその波及効果として期待できることではないでしょうか?

川井:
まだまだ議論はつきません。「木育」という概念作りもいま始まったばかりであり、すべての委員の間で足並みがそろっているわけでもありません。「木育」の範囲、枠組み、森林環境教育との関係など検討すべきことが山とありますが、これから少しずつ世の中に出てきますのでご期待いただければと思います。

本日は「木をつかって、森をそだて、環境をまもる」というテーマのもと、とくに木材利用・木材科学・木材工学の分野の成果を小・中・高校教育にどのように反映し、具体的な教育に取り込むか、その際の課題は何かなどについて検討しました。
現場の中学・高校の校長先生、教育学部の先生、木材科学の先生にお越しいただき、議論を重ねました。学会として、研究者としてやるべきこと、環境教育のプログラム作り、コンテンツ作りについては、研究者のみでなく現場の先生と一緒になって作成し、森林・木材教育の実践現場に提供していく必要があると思います。

本日は、長きにわたりシンポジウムにご参加いただきありがとうございました。パネラーの皆さんにもう一度お礼を申し上げます。

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